こんにちは!
このブログを運営している理系しまびとです。
この記事では、修士号と博士号取得者の初任給と生涯年収を比較してました。
学部生や修士の学生で、博士課程に進学するかどうか迷っている人も多いのではないでしょうか?
進学を決める要因はたくさんありますが、その一つとして就職先や年収、初任給は気になるテーマの一つだと思います。
そこで、今回は初任給や生涯年収を調べてみました。
海外の情報も含めて、定量的に比較していきますよ。
この記事を読めば、
学位ごとの生涯年収や給与の平均値がわかります。
それによって、人生プランが立てやすくなったり、進学や就職などの意思決定もしやすくなると思います。
※ 国勢調査や企業、大学の調査など、データによってばらつきはみられたのであくまで目安として見て頂けたらと思います。
こんな方におすすめ
- 学部生や修士の学生で進学を考えている方(特に理系)
- 博士課程に進学するか迷っている方
- 修士と博士の差が年収(市場価値)を軸に知りたい方
僕は日本で修士号を取り終えてから、博士号取得のために渡米しました。
ずっと日本に住む予定で、日本で就職するなら、まずは修士号で十分かな~と思っていました。
しかし、留学を通じて海外で挑戦したい!という思いが強くなってきました。
海外大学院進学を決める際には、やはり、さまざまな視点で日本と海外の大学院の比較を行いました。
海外大学院で博士課程進学理由の一つは、海外では博士号取得者の年収が高いことを知っていたからです。
つまり、博士課程に進学して博士号を取得することで金銭的なメリットも期待できると思ったからです。
この記事では、その内容について詳しくまとめています。
もくじ
学士・修士・博士号の初任給と生涯年収の違い
「はやく社会人になって自由に使えるお金が欲しい!」
僕は何回そう感じたか数え切れないほど、そんな風に思っていました(笑)
でも、「今頑張って勉強して学位を取れば、生涯年収は上がって将来の生活は豊かになる!」ということに気づいたのです。
もちろん、個人によって大学院進学が向いているかどうかは違いますし、年収だけで決めることはできませんが。
結論から言うと、国に問わず、生涯年収は「学士<修士」の傾向はハッキリあります。
あくまで目安ですが、学部卒と修士卒では生涯年収では約5,000万円の差が出るそうです。
つまり、長い目でみれば修士に進学したほうが稼せげるよということです。
正直なところ、日本の博士卒に関する企業の統計的なデータは見つけられませんでした。
データが少ないからでしょうか..?
そこで、海外のデータも探してみたところ、博士卒は専門分野によって大きな差がありました。
データによってばらつきがあるので、目安としてみてほしいのですが
学部卒、修士卒、博士卒の生涯年収の差は、それぞれ4,000万円~6,000万円くらいの差でした。
ざっくり言うと、学位を上げるごとに5,000万円くらい生涯年収が上がるという感じです。
お~よそでいうと、博士号と学士号取得者の生涯年収差は >>> 約1億円 <<< !!!! ということですね。
金銭的なメリットを考慮して、進学すべきかどうか考えた場合、
「"いつ"までに"どれくらい"の収入が欲しいのか」をハッキリさせる必要があるようです。
「進学すると収入を得るのが遅くなるが、生涯年収は高くなる」からです。
それでは、詳しい数字も示しながら説明していきます♪
日本での給与・年収比較(学士・修士)
正直にいうと、博士卒の初任給や年収がよくわかりませんでした((笑))
各企業の明記している初任給では、博士卒の初任給は修士卒の平均+2~3万くらいかな~という印象です。
国が開示しているような確信できる統計値は見つけられませんでした。
厚生労働省が公開している「賃金構造基本統計調査結果」を載せておきます。
学部卒と修士卒の比較ができます。
(博士卒はなぜデータがないのかは謎です(汗)データ数が少ないのでしょうか、、、)
このデータは最新で、国が出しているデータなので、かなり信頼性が高いと思います。
参考:令和元年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況 学歴別にみた初任給
学位 | 初任給 |
大学院修士課程修了 | 23.9万円 |
大学卒 | 21.1万円 |
高専・短大卒 | 18.4万円 |
高校卒 | 16.7万円 |
大学と大学院修士卒で、約3万の差があるのがわかりますね。
ボーナス等の影響もありますが、単に12か月分掛け算すると、一年で36万円の差になります。
修士課程で過ごす2年間分の差と学費などを考えると、その程度か....という感じもします。
その2年間の間に学部卒の人は多少昇給しているとおもいますし。
”峠の雑記ブログ”さんが「大学院卒の給料を大卒と比較してみた【理系版】初任給・生涯年収を知ろう」という記事で計算して詳しく比較していました。
参考までにということですが、この記事によると、
38歳で大学院に進学した場合のほうがかかった学費も含めて稼ぐことができます
ということです。
正直、「追い越すのおそっ」とおもいました(笑)
それでも、学部卒と修士卒の生涯年収差は4700万円だということです。
長く働くことを考えると、後半で大きく巻き返すことが分かりますね。
さらに、博士号まで進むと学士の生涯年収を追い越すのは40歳以降になりそうです。
40歳って結構おじさん/おばさんなので(ボソッ)、それまで待つ意味があるかというところですね。。。
おじさんになってからお金持ちになってもなぁ、、、もっと若い時にお金ほしい 🙁 って人は向いてないかも。
大学の各役職ごとの年収
博士卒だとアカデミックに進む方も割合として多いと思うのですが、大学教員の給与は公開されているので調べてみました。
博士号を取得して、もしアカデミックに就職した場合の参考です。
気になる方は、自分の大学も調べてみてください。先生たちの給与がわかりますよ(笑)
各大学のデータが公開されていますが、一例として東京大学の各役職ごとの年収を載せておきます。
(例)国立大学法人 東京大学の役員の報酬・給与等について
役職 | 平均年収 |
教授 | 1196.5万円 |
准教授 | 951.4万円 |
講師 | 867.3万円 |
助教授 | 725.5万円 |
参考:独立行政法人、国立大学法人等及び特殊法人の役員の報酬等及び職員の給与の水準(平成30年度)
国立、私立、各大学ごとに給与は異なりますが、教授まで上り詰めれば1000万円をこえる場合が多いようです。
逆に言えば、教授でも年収1000万円近くが限界のようです。
海外:年収、生涯年収比較(学士・修士・博士)
日本のデータが限られていたため、海外の初任給や年収のデータも調べてみました。
海外といっても、アメリカのデータです。
いろんな記事や論文、サーベイの結果が出てきました。
学位ごとの年収比較
まずは分野に関係なく、学位ごとの年収の比較を見てみましょう。
ついでに失業率も記載しておきます。
(表)学位ごとの年収中央値と失業率
年収中央値 | 失業率 | |
博士 | $ 97,916 | 1.1 % |
修士 | $ 77,844 | 2.0 % |
学士 | $ 64,896 | 2.2 % |
参考:U.S. Bureau of Labor Statistics (BLS)
海外だと博士号取得者の年収は中央値で1,000万円くらいです。
参考程度に、日本の教授クラスが年収1,000万円くらいでしたね。
ちなみに、海外の教授も平均は年収1,000万円程度のようですが、スタンフォード大学やハーバード大学になると2,5000万円くらいになるようです(笑)
参考 2018-19 AAUP Faculty Compensation Survey
学位を取得しておくことによって、失業率も低くできることがわかりますね。
博士号取得者は確かに就職先を見つけるのが大変だと聞きますが、失業率でみると学士号取得者の半分なんですね。
失業率という点で、ここまではっきりした差が出ているとは思っていませんでした。
個人的な予測ですが
これから人工知能やロボットがさらに汎用されるようになると、人工知能に置き換わりずらい高学歴者の市場価値が上がるのではないかと思っています。
分野ごとの生涯年収比較
分野ごとに学位ごと(学士、修士、博士)ごとの生涯年収のデータを見てみましょう。
(表)アメリカの学位ごとの生涯年収
学士 | 修士 | 博士 | |
コンピューター・数学 | $ 3,044,000 | $ 3,541,000 | $ 3,890,000 |
工学 | $ 3,349,000 | $ 3,918,000 | $ 4,176,000 |
文学 | $ 2,083,000 | $ 2,444,000 | $ 2,755,000 |
教育 | $ 1,789,000 | $ 2,260,000 | $ 2,802,000 |
参考:United States Census Bureau
2014年の記事から探したものなので、若干データは古いですが目安としては十分だと思います。
理系の博士号取得者の生涯年収は約4億円に達し、文系だと3億円くらいでしょうか。
学部卒だと生涯年収は2~3億円くらいみたいですね。
学士と博士では生涯年収に1億円弱($1,000,000)の差が出ていることが分かります。
割合でいうと、博士号取得することによって、人生で稼げる金額が20~30%くらい上がるってことですね。
理系分野の年収は平均して高いですが、学位取得によって得られる年収は文系も同様に増加していますね。
もちろん、このようなデータが個人にそのまま当てはまる訳ではありませんが、進学を考えている際に一つの指標になりますね。
博士の分野ごとに給与の比較
分野ごとでは、文系より理系の給与の方が高く、その中でもコンピューターサイエンス系の職種の給与が高いことは「アメリカの学位ごとの生涯年収」の表でもわかりますね。
これらの数字では、時間軸を考えた昇給のデータは分かりませんでした。
調べていると、分野ごとに博士号取得者の年収をキャリアの各フェーズごとに比較した記事を見つけました。
「Early Carrier」 と 「Mid-Carrier(10年以上勤務)」 で比較しており、簡単に言うと分野ごとに初任給からどれくらい昇給するかというものです。
Doctoral Degrees by Salary (2020) ※昇給率高い順
Major | Early Career Salary | Mid-Career Salary |
Chemical Engineering | $ 96,100 | $ 146,000 |
Organic Chemistry | $ 83,400 | $ 146,000 |
Computer Science | $ 118,000 | $ 145,000 |
Electrical Engineering | $ 103,000 | $ 144,000 |
参考:10 Best Doctoral Degrees by Salary
アメリカでの求人情報をみていても、電気工学系やコンピューターサイエンスの求人の初任給が高いのは明らかです。
この傾向は表からも読み取れます。
この記事で面白いのは、10年以上勤務した場合、化学系の職種がコンピューターサイエンス系の年収に追いつくということです。
化学工学は爆速で年収上がるよということです(笑)
先送りにはなるけど、化学系の職種でもコンピューターサイエンス系と同等の年収がもらえるようになることが分かります。
この記事から、初任給が高いからといって、10年後にもらう給与も他より高いとは限らないことが読み取れます。
個人の状況やこれからの社会の動きもあるので、記事の数字を鵜吞みにはできませんが、分野によってここまで差が出るとは驚きです。
まとめ:どんな人が博士課程に進学すべきか
この記事では、学位取得による金銭的なメリットについて調べてみました。
研究が好きかどうかなど、そもそも論で博士課程に向いているかどうかも決まるのですが、今回はお金の価値観的に向いているか考えてみます。
(ざっくり)まとめ
・学士の初任給は21万円くらいで、修士との差はざっくり2~3万円くらい
・学士、修士、博士と、学位を取得するごとに生涯年収がざっくり5000万円くらい上がる。
・でも、生涯年収が追いつくのは40歳くらいか、それ以降になる。
・生涯年収はざっくり、学士:2~3億円、修士:2.5~3.5億円、博士:3~4億円。
・コンピューターサイエンス系や電気工学系の生涯年収は高く、4億円くらい。
・初任給が高いから年収がずっと他の分野と比べて高いとは限らない(化学系の昇給率高め説あり)
博士課程に進むと、生涯年収自体は上がるけど、若いうちは自由に使えるお金が限られるということになります。
人生で総合的に見ると、博士号は生涯年収が上がるという金銭的なメリットをもたらす可能性はありますが、その収入が人生の後半で後回しで返ってくる点はデメリットといえそうです。
まさに、自分自身に投資している感じです。
また、今回は海外の博士号取得者のデータを中心に調べましたが、海外での就職もOKかどうかも決め手になりそうです。
博士課程を終えると、既に30歳近くで身体的に元気なピークは過ぎてしまいますから、"いつ"お金を使いたいかによりますね。
平均的に40歳より若ければ、学部卒の方が得た収入が多いようですから、年齢とお金の価値観のバランスが問われそうです。
たとえ年収だけに着目しても、博士課程進学は個人の価値観次第ということが分かりました。